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「未体験ゾーンの映画たち 2021」と「あのこは貴族」のとっておき情報

(2021年3月2日15:00)

映画評論家・荒木久文氏が、「未体験ゾーンの映画たち 2021」と「あのこは貴族」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、2月23日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

アラキンのムービーキャッチャー/「未体験ゾーンの映画たち 2021」と「あのこは貴族」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   荒木さーん!よろしくお願いします。

荒木   こんにちは。よろしくお願いします。
2月ももう今週で終わりですよ。本当に早いですね。
映画の方も段々春に向かって大作も出てくると思いますので、楽しみにしていてください。

今日は先月、東京のヒューマントラストシネマ渋谷で実施されています『未体験ゾーンの映画たち 2021』についてご案内しました。
この企画は日本での劇場公開が見送られた作品の中から、マニアックな作品、そして変わった作品を上映しちゃおうというものなのですが、3月からは後半戦に入ります。 この後半戦でもすごい注目作品があるので、極めて異例なのですが、今回再び『未体験ゾーンの映画たち』についてご紹介します。

鈴木   「極めて異例」大歓迎ですね!

荒木   題して、「まだまだ間に合う!『未体験ゾーンの映画たち』を体験しよう」というところでしょうか?
ということで、今回なぜ2回も特集したのかというと、実は昨年の6月にコロナで新作が公開されなかった時期に「私の好きな映画特集」というのを放送しましたよね。

鈴木   やりました!あれ大好評でしたよ!

荒木   リスナーさんやダイちゃんからもいただきましたよね。
その時に誠に僭越ですが、私、荒木の好きな映画として皆さんに熱を入れて紹介した、 40年も前の作品が、この『未体験ゾーンの映画たち』で上映されるんですよ。

鈴木   ええー!?

アラキンのムービーキャッチャー/「未体験ゾーンの映画たち 2021」と「あの子は貴族」のとっておき情報
「世界残酷物語」(©RTI 1962)

荒木   私の好きな映画、堂々の第2位でしたね。ヤコペッティの『世界残酷物語』。

鈴木   すごいことじゃないですか、ちょっと!!

荒木   私が小学校低学年の時、父親と初めて映画館で観て大ショックと感動を受けたイタリアの作品です。
この映画は、モンド映画と言ってイタリア語で「犬の映画」というかスラングで「ゲス野郎」という名前が付くんですが、渾身のインチキドキュメンタリーとでも言いますかね、今でいう「世界衝撃映像集」みたいなもんですよ。でも中身はほとんどやらせ満載のフェイクドキュメンタリーなんです。ばかばかしくっていかがわしい、でも不思議な魅力がある作品で、のちのいろんな作品に大きな影響を与えた作品群なんです。
もちろん正当な映画史の中では当然異端なんですが、有名な作品です。
この映画界のでたらめな金字塔『世界残酷物語』が監督ヤコペッティの没10年を迎える今年、なんとHDリマスターによるオリジナルイタリア語完全版で帰って来るんですよ!この『未体験ゾーンの映画たち 2021』で上映されます。しかも「残酷物語3部作」ともいえる同じくヤコペッティの作品『続・世界残酷物語』及び『さらばアフリカ』も同じくHDリマスターによる完全版で上映されるんです。すごいです。私興奮してますよ。
皆さんに紹介する前に、このDVDを以前から発売しているキングレコードさんからサンプル版を見せていただきました。
いろいろ思い出しました。今の目から見ると洗練されてないのですが、当時のエネルギーがふつふつと湧いてくるのを感じます。
モンド映画の原点にして頂点たる3作品、見逃す手はないと思いますよ。
是非この際にこの歴史的?作品をスクリーンで見ていただきたいと思います。
鈴木   ある意味、荒木さんのナンバーワンでもありますよね。

荒木   ほんとですね。この3本は3月5日金曜日からの公開です。
この『未体験ゾーンの映画たち 2021』、他の作品も3月から充実しています。少し紹介しましょう。
まずゾンビ好きのダイちゃんのために3月26日からはなんと『ゾンビ津波』。

鈴木   ゾンビ津波!?

荒木   平和なビーチで巨大津波が発生するんですが、その津波に乗ってきたのは大量のゾンビたち。一人の漁師が戦いに挑む…というよくわからない話です。

同じく3月26日からはゾンビアクション、『アンデッド・ドライバー 怒りのゾンビロード』。ゾンビが支配した世界で、人間の戦士がBMWに乗って戦う…というものです。

そして、魔女、ウィッチが出てくる作品が多いですね。
3月19日からの『ウィッチサマー』。反抗期の少女と1000歳の魔女との対決ホラーだそうですよ。

鈴木   それホラーって言っていいんですかね?

荒木   怖いとホラーですけど、怖いか怖くないかは観てみないとね。

3月26日から『タイム・ガーディアンズ 異界の魔女と時をかける少女』というロシア映画で、ファンタジーアドベンチャーです。
それから『魔女の密約』という少女と魔女の危険な約束とは何か?という作品、3月12日から上映です。

そして動物、というか怪物もの、これもおもしろいです。
3月19日公開の『モンスターランナー 怪物大戦争』。少女のハンターが世界の運命を背負って怪物と戦うという作品です。

そして極めつけはサルと豚との対決。最強のサルと豚って何だと思います?

鈴木   キングコングと…。

荒木   いいとこいってるなぁ。でもちょっと違うんですね。ヒントは『西遊記』!

鈴木   あ!孫悟空?

荒木   そう、孫悟空と猪八戒ですね。

鈴木   ええ!?戦うの!?

荒木   そう。

鈴木   ダメじゃん、それじゃあ…。

荒木   この史上最もやばいサルと史上最も凶暴な豚、西遊記の2大スターが全力で戦います。その名も『孫悟空 vs 猪八戒』。

鈴木   全力で戦うわけね?

荒木   そうなんですよ。3月19日から公開です。

3月も傑作ぞろいの『未体験ゾーンの映画たち 2021』3月に入ると佳境を迎えます。 詳しくはWEBで調べてください。
チケット追加いただきましたので。5名様分です。

鈴木   いや、ありがとうございます!すごいたくさん応募いただいてますよ。物好きが多いんですよ、これはこれで。

荒木   いや、面白いと思いますよ。

続いて2月19日から公開の『あのこは貴族』という作品をご紹介します。 とても個性的な作品です。

アラキンのムービーキャッチャー/「未体験ゾーンの映画たち 2021」と「あのこは貴族」のとっておき情報
「あのこは貴族」(全国公開中)(©山内マリコ/集英社・『あのこは貴族』製作委員会)(配給:東京テアトル/バンダイナムコアーツ)

二人の若い女性が主人公です。 一人は華子さん。門脇麦さん(上の写真㊨)が演じています。
お金持ちの家に生まれ、東京の高級住宅地 渋谷・松濤にお住い。
超箱⼊り娘として何不⾃由なく成⻑し、幸せ=結婚であると信じて疑わない彼女です。
20代も後半になった時、結婚を考えていた恋⼈と別れてしまい、彼女としては初めて⼈⽣の岐路に⽴たされ焦ります。
あらゆるコネや⼿⽴てを使い、お見合い、お相⼿探しをします。その結果、ハンサムで良家の出身の若手弁護⼠・幸⼀郎(高良健吾さん)と出会います。無事に婚約、結婚し 彼女の人生はこれまでと同じように順⾵満帆に思えたのでしたが…。

一方、もう一人の女性は富山県出身の美紀さん。水原希子さん(同㊧)が演じています。
彼女は猛勉強の末に東京の名⾨⼤学に合格、上京しましたが、家が貧しく、学費が続かないので、夜の世界・水商売で働くも思うようにいかず大学を中退します。
そして今の仕事にやりがいを感じているわけでもなく、都会にしがみつく自分に意味を⾒いだせずにいました。のちの華子さんの夫になる弁護士の幸⼀郎さんとは⼤学の同期⽣という関係から、別世界に⽣きる華⼦と出会うことになります。それがきっかけでそれぞれに思いもよらない世界がひらけていきます…。

山内マリコさんの小説を原作に、同じ東京に暮らしながら全く異なる生き方をする2人の女性が、それぞれ自分の人生を切り開こうとするドラマです。

田舎と都会。お金持ちと貧乏。という対立構図ですね。地方出身者が都会出身者に感じる高い壁。

鈴木   あるよねぇ。

荒木   わかりやすい例を出すと、そうですね…ガラスの仮面の北島マヤと姫川亜弓? 男の人には、かえってわかりにくいかもしれませんね。

鈴木   いや、でもわかりますよ。

荒木   我々若いころは「一億総中流時代」って言ったのはもはや昔のことですね。 中間層ってすでに消えてしまっていますよね。ここのところ貧富の格差はアメリカほどではないにしろとても顕著です。

鈴木   日本もありますよね。

荒木   ありますね。加えて地方と都会の格差。生まれ育った場所と家庭環境と、持っているお金によってスタートラインからして圧倒的に違うんですね。
これは現実。厳然とした事実ですね。それをきっちり描いている映画です。

監督は『グッド・ストライプス』の岨手由貴子さん。長野出身で今は富山に住んでいるのかな。

私は初め、この映画の出演者を聞いた時、てっきり門脇さんが地方出身の女性役で、水原さんはモデルでもあるし都会的な…。

鈴木   どっちかと言うとそう思うね。逆だね。

荒木   そう思うでしょ?都会っ子のお嬢様とイメージから勝手に決めてたんですが、実際には逆ですね。
俳優さんてすごいというか、演出がすごいのもあるんでしょうけど、こちらの貧しい思い込みが悪いのか、見事に二人とも役にはまってましたよ。

鈴木   しっくりきてますか?

荒木   そうなんですよ。私も都会の富裕層、現代の貴族たちを、たくさん知っているわけではないのですが、何人か知ってますが、本当にいいとこの金持ちのぼっちゃん嬢ちゃんたち、下手したら、ひいおじいちゃんが昔の貴族院議員だとか、皇族につながっている階層の人たちって、言い方悪いけど、なんとなくぼーっとしているというか、せこいところないんですよ。

鈴木   細かいこと考えなくていいからですよね。

荒木   本当に穏やかな人多いんですよ。私みたいにガチャガチャしていないんです。 そういう意味で門脇さんの鷹揚な演技、頷き方まで、グッドキャスティングなんだなと思いました。
そしてあの都会的な水原希子さんも、この映画では、たまにいる田舎出身の変異種みたいな、無駄にきれいな人。いるでしょ。

鈴木   わかるわかる。

荒木   もったいない美人っていますよね。ちょっとあか抜けない美人。そんな感じがすごくよく出ていてとてもリアリティありました。 よく二人をキャスティングしたなと思いました。

いくつか印象的なセリフもありました。
希子さんがつぶやく、「田舎から出てきて搾取されまくって、私たちって東京の養分(栄養分)だよね」とか、お金持ちが言う「違う階層の人間とは会わないようになってるんですよ」って言葉、ひと言ひと言すごいですよね。
そんな格差を変な思い入れなしにきっちりと描いてます。

鈴木   これはシリアスタッチなの?コメディタッチなの?

荒木   シリアスなんですけど、女性同士の対立ではなく、女性の自立をそれぞれ描いているので喧嘩しているわけではないんです。シスターフッド的な映画なので、「喧嘩見るのは嫌」っていう人でも大丈夫です。ちょっと個性的な映画ですね。
2月26日から公開「あのこは貴族」という作品でした。

ということで今日は、イベントと映画1本ご紹介しました。

鈴木   荒木さんが、もし我々が20代くらいに若返ったとして、恋をするんだったら、すごく育ちのいいお金持ちの都会の方がいいですか?それとも田舎の方がいいですか?

荒木   今度は都会のお金持ちの方がいいです。

鈴木   あははは!“今度は”ね。

荒木   うちのかみさん田舎出身の貧乏でしたからね。今度は都会的でお金持ちの方と恋愛してみたいですね。怒られちゃうな。

鈴木   そういうことを心に抱えながら人って大人になっていくんですよね。

荒木   ほんとですね。そういうことですよね。

鈴木   そういうことですね。
いやーでも、『未体験ゾーンの映画たち 2021』の5名様分のチケットすごくたくさんご応募いただいてますから。ありがとうございます。

荒木   よろしくお願いします。

鈴木   来週もよろしくお願いします。



■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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