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映 画

「わたしがやりました」「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」のとっておき情報
(2023年11月11日11:15)
映画評論家・荒木久文氏が「わたしがやりました」と「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、11月6日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 いよいよ 11月で、日本シリーズも昨日決着して…。
鈴木 タイガース!凄いじゃないですか~!
荒木 そして今年の流行語のノミネートなんかも出てくると、ちょっと追い込みって感じになって、気持ち的に焦りますね。
鈴木 (笑)気持ち的に焦るということは、要するに年末ってことなんですよ。
荒木 そういうことだよね。ということで、⒒月3日文化の日、この日から映画たくさん公開されました。大きな作品もありますので、その辺りはご自分で調べていただいて…(笑)、キラリと光るやつをご紹介したいと思います。11月3日から公開中「私がやりました」という作品です。

鈴木 私がやりました?
荒木 ちょっと意味深ですけど。現代フランスを代表する監督というとフランソワ・オゾン監督です。この人のクライムミステリーなんです、と言ってもユーモアたっぷりなので怖くないので楽しめます。
ストーリーは、今から90年も前のパリです。有名映画プロデューサーが自宅の大豪邸で殺害されます。容疑をかけられたのは貧乏な若手女優マドレーヌさん。マドレーヌはプロデューサーに襲われて自分の身を守るために彼を銃で撃ったと供述します。
彼女は親友でルームメイトの新人弁護士ポーリーヌと裁判に臨むことになります。
そしてマドレーヌはポーリーヌが書いた「男に襲われた女が名誉と身を護るために反撃した」という、正当防衛を訴える…女優ですからセリフを、完璧に覚えて読み上げます。
その結果、ポーリーヌの鮮やかな弁論とともに二人は裁判官や大衆の心を掴んで、見事無罪を勝ち取るんです。そればかりか、彼女は悲劇のヒロインとしてスターの座を駆け上がります。それで終れば普通なんですが。
そんな彼女の前にかつての大女優オデットさんが現れるんです。オデットさんは、実はプロデューサー殺しの犯人は自分だと主張します。そればかりではなくマドレーヌたちが手にした名誉も名声も自分のモノだと主張するという…、さあ果たしてどうなっていくのか?という、そんなお話です。
鈴木 話を聞いてると、かなりスリリングじゃないですか!
荒木 フランス映画らしく、のほほんとしたところもあって優雅ですよね。
かつての大女優オデットには、フランスの本当の大女優イザベル・ユペールが出演してるんです。
鈴木 (笑)すげー!
荒木 新人女優、若い2人は、ナディア・テレスキウイッツとレベッカ・マルデールというとてもセクシーで可愛い女優さんです。 監督はフランソワ・オゾン。
お名前は聞いたことあると思うんですけど、ラブストーリーから社会派、感動作から問題作まで幅広い表現力で、毎回異なるジャンルの話題作を生み出しています。たくさん作っている監督なんですけど、この作品は今年だけで3本目の監督作品になるんですね。
ちょっとぽわーんとした、ま、クライムミステリーというんですけども、ファッショナブルでユーモアたっぷりなので、フランス映画お好きな方は是非観てください。
「私がやりました」という、現在公開中です。
…さて ダイちゃん、セカンドキャリアって、言葉、最近よく聞きますよね?
鈴木 もちろん!聞きますねー。
荒木 もともとは プロスポーツ選手の引退だとか、会社引退して、次何やるかみたいなことなんですけど、最近は自分のキャリアを、キャリアアップすることにも使われますよね。
鈴木 逆に定年後だってそうじゃないですか。
荒木 そうですね。翻って、タレントさんや歌い手さんは、一般的に年を取ればそれにふさわしい役や歌に取り組んでいきますよね。城之内早苗さんが演歌に行った感じ。
鈴木 私、「紫陽花橋」。城之内早苗さん、大好きでした。
荒木 一方で、「引退」っていうのはあんまり…山口百恵さんなんかは除いてですね、今まではあまりありませんよね。ところが最近、こういった芸能界にも、引退からセカンドキャリアという現象がはっきり出て来ているんですよね。それは女性アイドル、特にAKBや坂道グループのタレントさんたちの卒業ってやつですよ。
鈴木 ああー、はいはい。
荒木 グループアイドルって何人いるのかと思ったら、7000~800人?現役で。
鈴木 え!?そんなに!?
荒木 いるんですって。地下だとか、地方系を除いても、その位いるんじゃないかと言われますよね。
鈴木 そこに1人、荒木さんが入っていてもわかんないですよ。
荒木 何言ってるんだか(笑)。わかるよ。最近、柏木由紀ちゃんが、AKB に17年間在籍して卒業しましたよね。たくさんそういう人いるんですよね。卒業してる人、年間100名以上じゃないかなって言われています。
鈴木 どうしてるんだろ、皆さん。
荒木 そのまま女優とか、歌手で残るっていう方もいますけど、全員がいわゆる芸能界に残れるわけじゃないですよね。AKBのアイドルでもグループ引退してから活躍しているのは、前田の敦ちゃんとか、川栄さんとかね、大島さんとかほんの一握りですね。そうするとそれ以外の女性は、引退すると次の仕事を見つけていかなくてはいけません。そこでアイドルのセカンドキャリアという話になるわけですよ。前置きがちょっと長かったですけど。
鈴木 なるほど、前置きで逆にわかりやすくなりましたよ。
荒木 ということで、一時はスポットライトを浴びて華やかな舞台に立った彼女たち、それを忘れて第2の人生を送れるのかって興味ありますよね。
鈴木 あります!あります!
荒木 そんなテーマで描かれた作品が今日ご紹介する2本目です。正式なタイトルは「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」という…。

鈴木 なが…、長!!
荒木 長いですよね。で、「つんどる」という短縮形で、ヒットしているらしいです。現在公開中です。タイトルの通り 元アイドルの話です。
アイドルを引退した安希子さんが主人公です。まあ、芸能界に残れなかったということで、一般の会社に就職するんです。全く違う世界でも、アラサーの元アイドルとして幸せで充実した人生を歩んでいる…と自分に言い聞かせるんですけど、ある朝、突然ひどい体調不良になります。自分の理想と現実のギャップの谷間で無理してきたんで、メンタルをやられてしまったんですね。
結局 会社を辞めることになります。安希子さんは失業して、家もなく、恋人もなく、手元には10万円しかない…という厳しい現実に直面するんです。そんな時友人から、都内の一軒家でひとり暮らしをする56歳のサラリーマンとルームシェアしないかという話があります。
鈴木 56歳?サラリーマン!?
荒木 (笑)おじさんですよ。少なくとも家賃はすごく節約できるよと。そんな提案に安希子さんは乗っちゃうんですよね。ササポンと呼ばれるその中年おじさんとの奇妙な同居生活を始めます…という物語です。原作は「SDN48」の元メンバーで、今は作家・ライターとして活躍している大木亜希子さんが自身の体験に基づいて執筆した小説なんです。
鈴木 自分の体験に基づくの?
荒木 そうらしいんですよ。全部が全部じゃないけどね。主演は2016年まで「乃木坂46」のメンバーとして活動し、実際のアイドルだった深川麻衣さんが演じます。
56歳サラリーマンのおっさんは、俳優の井浦新さんが演じています。監督は穐山茉由さんていう私も好きな監督なんですけど、自分の仕事をもちながら映画監督をやっているっていうね、面白い方です。
原作の大木亜希子さんて、14歳で芸能界入りし「SDN48」2期生かな、その後卒業してから、WEBメディアに記者として入社していろいろやってるんです。で、いろんな本書いてるんです、ノンフィクション小説とか。
鈴木 才能あるじゃないですか!
荒木 そうなんですよ。私、別の番組でこの人をゲストに招いたことがあって、彼女の本も何冊か読みました。ちょっとアイドルっぽくないね。どっちかというと…、こんなこと言っちゃいけないけどゴツい感じで、え?この人、アイドル…みたいな感じです。ま、小説家としてのキャリアを重ねているんですけど、いろいろと苦労したということで、
小説「シナプス」というのを読んだんですけど、ちょっとエッチ味が入っている小説でしたね。
そして、もう一冊『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』という本ではAKB48グループを卒業した女性を取材しているんですよ。彼女たちが、いかに一般社会に戻り、別の職業に就いて、どのような悩みとともに生きているのかというのを紹介しているんです。これ面白かったですよ。
鈴木 そうなんだ。
荒木 隣接業界というか、声優さんとかね、振付師さんとかね、それからオンラインコミュニテイなんかで活躍している方もいるんですが、ラジオ局の社員になった人もいるんですね。元NMB48の河野早紀さんは、FM大阪の社員なんですね。
鈴木 え!?今も?
荒木 はい、今も(笑)。当然ね、ダイちゃんみたいにしゃべったり、制作にかかわっているのかなと思ったら、なんと営業部でクライアント開発なんです。
鈴木 あららららー!
荒木 いいかもね、話題とか取っ掛かりが出来るから。
鈴木 そうだよ!知らないうちにクライアントがOKですってでますよ。
荒木 (笑)そうですね、でも大変みたいですけど。他には元SKE48の菅なな子さんは、卒業したあと勉強して、1年後に国立名古屋大学経済学部に現役合格したそうです。そして、「元アイドル受験戦記 SKE48をやめた私が数学0点から偏差値69の国立大学に入るまで」というタイトルの本を出して、現在は広告代理店社員として活躍してるそうです。
鈴木 ああ!いいですねー。
荒木 他にも、アパレル販売員になった人とか、保育士さんになった人とか、バーテンダーとして活躍している、そんな人のノンフィクションが書かれていますよ。
鈴木 14歳、13歳くらいで芸能界に入っちゃうと、本来勉強したくて、学業したくても出来なかった人が、後でやりたい人絶対いますよね。
荒木 そうなんですよね。ホントにそういう人がたくさんいると思います。
あの時勉強しておけばよかった…っていうね、一番勉強できる時だから。学業に専念したいって辞めた人もいますしね。私の好きだった小野恵令奈ちゃん、エリぴょん。もう…辞めちゃってね。ダイちゃんも好きな人いたでしょ?
鈴木 私は…、好きって言うかね、番組でFM富士で6時間一緒にやった、れいにゃんこと藤江れいなさん。れいにゃんは、その6時間で好きになりましたね。
荒木 なるほどね。
鈴木 あはははは。なるほどねって…(笑)。
荒木 やっぱり傍にいて、握手するとそうなるんだね。やっぱり外からずっと見てるより、握手会とか行くとみんなファンになっちゃうんだよね。
鈴木 だからわかるよ!ファンになる気持ちがわかったもん!その時。
荒木 確かにそうだと思います。アイドルも人間だからね、いろんな苦悩を持っていたりなんかするんですけど、好きになられるのは仕様がないんで…、そういうご商売だからね、いろんな面もあると思うけどね。
そんな話が詰まった映画です。「つんどる」。プライドとか現実のギャップとか、元アイドルとしての女性の本音とか自尊心とか見えているんで、女性には刺さると思いますよ。
私も、えりぴょんと渡辺麻友ちゃんがお気に入りでしたけどね。
鈴木 そうなのー!そうなの荒木さん?
でもさ、荒木さんさぁ、某局で長い事つとめてていろいろやってたじゃないですか、そしたらそれこそ当時のアイドルがたくさんいらっしゃるじゃないですか。いろんな事を見たんじゃないですか?表も裏も、女性タレントも。
荒木 いやいや、表も裏もっていうより、表ですよね。基本的に・・・。
あ!裏を見たのは1人いたなあー。…あ、2人いたなー。
鈴木 えー!?
荒木 A地M里さんとですね…。
鈴木 危ない!危ない危ないよ!イニシャルトーク危ないよ。
荒木 またその辺りは、飲んだ時にね。
鈴木 飲み会でお願いします!それは。
荒木 ということで、今日はアイドルOGのお話でしたね。
鈴木 ありがとうございます。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。