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東日本大震災関連の映画のとっておき情報

(2021年3月15日13:15)

映画評論家・荒木久文氏が、東日本大震災関連の映画のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、3月9日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

アラキンのムービーキャッチャー/東日本大震災関連の映画のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   荒木さーん!こんにちは。お願いします。

荒木   はい、こんにちは。お願いします。
早速ですが、今週木曜日は3・11東日本大震災から10年目ですね。
あの日のことはダイちゃんも私も当然リスナーの皆さんも忘れようにも忘れられませんね。 ダイちゃんは列車の中で…。

鈴木   そう、山梨行きの途中でしたからね。

荒木   あれから10年、まだまだ傷跡というか、物理的なものでなく心の傷が癒えない人もいっぱいいいます。

ところでちょっと視点を変えると、あの東日本大震災は歴史上始まって以来、最も多く映像に残された災害であると言われていますね。
もちろんテレビカメラに残されたものも多いのですが、圧倒的に多いのは個人のカメラ付きの携帯電話などに残された画像映像なんですよね。時代ですよね。
そういう背景がありますのでこの10年はそのような映像をもとに、テレビをはじめ、多くのドキュメンタリー映画が作られているんです。
全体像は不明ですけど、その数はすでに2015年までに400本を超えるんじゃないかと言われています。
ドキュメンタリーだけでそれだけあるので、震災をテーマにしたドラマ作品などを含めると一説には800を超えるのではないかとも言われています。

鈴木   あるでしょうね。そのくらいね。

荒木   ダイちゃんもたまに見るでしょ?

鈴木   見るしね、この間、別の番組で土曜日のカウントダウン番組があるんですけど、そっちの方でも一つ、震災絡みの映画をご紹介しましたよ。

荒木   どんな映画なんだろ?

鈴木   『たゆたえども沈まず』ですね。

アラキンのムービーキャッチャー/東日本大震災関連の映画のとっておき情報
奇跡の一本松(「たゆたえども沈まず」から)(©2021テレビ岩手)

荒木   あら!岩手の!今、僕が紹介しようと思っている作品です。

鈴木   え、本当に!?これはある意味ちょっとした奇遇だなという感じですね。

荒木   そうですよね。じゃあもう皆さんに紹介しているんですね。でもこの番組のリスナーさんはご存じない方もいますもんね。

鈴木   是非紹介してください。

荒木   ドキュメンタリー作品の中では非常にクオリティが高いなと思います。テレビ岩手という日本テレビ系列の岩手県の地元局が、津波や復興、そして防災の資料として全国や後世に伝え遺そうとの思いから、あえてテレビ番組にとどまらず「映画」として展開することにしたものです。
日本テレビ系列のテレビ局の取材団が撮影した被災地の記録や、「定点観測映像」という定点にカメラを設置して撮り続けるもので、街や鉄道の変遷がはっきり見えるのですが、なんと1850時間!一日24時間見続けても77日以上かかるという量ですよ。

鈴木   そんな時間になるのか…。

荒木   そうなんですよ。
その膨大な映像の中から、必死で生きる人々の想いと10年間の「岩手の復興」の歴史を映し出しています。スタッフの中には肉親や家をなくした人、いわゆる被災者でもある人もいて本当に力作ですよ。

アラキンのムービーキャッチャー/東日本大震災関連の映画のとっておき情報
釜石の街を襲う津波(「たゆたえども沈まず」から)(©2021テレビ岩手)

タイトルの『たゆたえども沈まず』は、揺れ動きながらも沈まずにある、という映画全体を通した思いを伝えるもので、パリの紋章にも書かれている言葉です。
ただ大変残念なのが、この作品、今は岩手県内の劇場でしか上映されていないんです。

鈴木   そうなんですよ。全国で観たいですけどね、これは。

荒木   ゆくゆくはDVDになると思うのですが、テレビ岩手の方も頑張って岩手以外の県でも上映するとおっしゃっていましたので期待したいと思います。

そして次は震災をテーマにした劇映画です。
現在公開中の『漂流ポスト / The Drifting Post』という作品です。漂流は海上をただよい流れること、ですね。このポストの存在は知っていますか?

鈴木   知らないです。

荒木   この漂流ポストというのは、震災の被災地・岩手県陸前高田市の山奥に建てられた郵便ポストです。実在します。普通のというか、どっちかというと色褪せた古びたポストです。
当初は東日本大震災で亡くなった人へ「手紙を書くことで心に閉じ込められた悲しみが少しでも和らぎ、新たな一歩を踏み出す助けになるなら」として設置され、遺族の想いを受け止める為のポストだったのですが、今では病気や事故など震災に限らず亡くなってしまった最愛の人に向けた想いを手紙に綴り届ける場所になっているんですね。
現在も多くの手紙が届き、手紙は同じ境遇の人々に共有され、心の蘇生を助けています。

ストーリーは、親友を亡くした女性が死を受け入れられずいた中、「漂流ポスト」の存在を知り親友への手紙を届けようと考える、というところから始まるドラマです。
現在公開中の『漂流ポスト / The Drifting Post』です。
他にも、現在上映中のドキュメンタリーですが、『きこえなかったあの日』という映画です。 今村彩子さんという監督の2013年の『架け橋 きこえなかった3.11』という作品の続編になります。被災したろうあ者や難聴者など耳の不自由な人を追ったドキュメンタリーです。耳の不自由な人は目の不自由な人と同じように、こういう大きな災害の中でハンデを負いやすい人ですよね。

鈴木   情報を聞けないからね。

荒木   そうなんですよ。「逃げろ!」って言われても聞こえませんからね。
この作品では、東日本大震災だけでなく、熊本地震、西日本豪雨、新型コロナウイルスなどの困難の渦中にいる耳のきこえない人たちの姿を記録し続けています。
『きこえなかったあの日』という作品です。

10年目を迎えますが、当時のことを振り返って災害に備えるとか被災者を想うことも大切ですよね。
ということで、現在公開中の大震災関連の作品をご紹介しました。

鈴木   ある意味この大震災関連の映画って、時を経るごとに逆に増えていかなきゃダメですよね。

荒木   そうですね。そういうことなんですよね。忘れないためにも、後世に残すためにもね。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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